吉元 由美

「嘘なら優しく」  吉元由美 著

<あらすじ>

孤独な夜の谷底で、誰かが不意に心の襞に手を差し入れてくる。

ひやりとした感触を残酷に感じながら、味わわずにはいられない。

そんな恋のはじまりがある(あとがきより)。

そんな恋はきっと初恋ではなく、せつなく苦しい、いくつかの恋を経て、それでもやっぱりその手をとらざるを得ない、心の事情がある。

終わらせなければならなかったそんな恋を、ひとつひとつ心の襞に刻み込むように書かれた恋愛小説集。6編を収録した短編集。

 

<感想>

終わった恋の切ない小説を書かせたら吉元由美の右にでるものはないだろう。

そう言い切れるほど、痛みの伴った恋の小説は素敵。

独身の人が読むのはモチロンのこと、結婚してから誰かを好きになったことがある人も、

この小説を読めば納得し、私が求めていたもの、

さみしかった理由はこれだったのかもしれないと気づくんじゃないか?と。

終わらせなければならなかったそんな恋を、ひとつひとつ刻み込むように描かれてる小説だ。

私がこの小説と出会った時、解説に目を通した瞬間、理解者を得たような・・そんな気持ちがした。

この単行本は短編集も為、時間のないひとにも読みやすい。

私のお気に入りは「あなたを抱いた夜」

 

「嘘ならやさしく」より 好きな文

孤独な夜の谷底で、誰かが不意に心のひだに手を差し入れてくる。

ひやりとした感触を残酷に感じながら、味わわずにはいられない。

そんな恋のはじまりがある。

人の心は自由にはならない。自分の心が自由にならないように。

   (中略)

誰かを好きだと言う気持ちのままでいられたらいいけれど、恋はそれだけでは すまない。

相手を想う気持ちに、さまざまな気持ちが入り込んでくる。

淋しさ、せつなさ、哀しみ、怒り、ジェラシー・・。

    (中略)

好きだという純粋な想いを、純粋なまま持ち続けることはできるだろうか。

純粋という言葉に一歩引いてしまうのは、

心の中で (それは無理なこと) と 思っているからなのだろう。

そもそも純愛なんて 存在しないのかも知れない。

いわゆる不倫 (どうもこの言葉には馴染めないものがあるのだが)と

云われる恋は ある種普通ではない緊張感や感情が伴う。

しかし、お互い何も求めずに好きだという気持ちだけでいられたら・・・

厳しい条件付とはいえ、ある意味で純愛と云えるのではないだろうか。

少なくとも、そういう状況のふたりが火遊びでなく、

本気で恋に落ちたのなら そして愛することだけに集中できたら、

そこには純粋さが成立するように思う。

 

「サマーキャンドル」 吉元由美 著

<あらすじ>

杏里の歌をテーマにしたラブ・ストーリー集。

「ボーイフレンド」「スノーフレイクの街角」「愛してるなんてとても言えない」「Groove A ・Go・Go」「SUMMER CANDLES」の歌詞を題材にして書いた小説集。

 

<感想>

わたしが感じている吉元さんの印象は、とても心の機敏に敏感な人だと言うこと。

傷ついた経験のあるひとは、優しさを知ってるんだよと語りかけてくれる。

そして、ひとが好きなんだろうなって感じさせてくれる。

この<サマーキャンドル>の本は、短編集なので読みやすい。

学生の頃の恋を思い出す小説でもある。今も大切なBoyfriendの話。

年上の結婚しているひとを愛してしまった話・・・など、

どれも終わった恋の話だが、今の自分を肯定してくれるよな気さえする。

 

「愛しているなんてとてもいえない」(by サマーキャンドル)より 好きな文

結婚している恋人が、彼女(独身)に語る言葉・・

「あなたのとって私は何なの?」

「僕の夢のいちばん近くにいるひと」

「私にとってあなたは、夢からいちばん遠い場所で微笑んでいるひと」

言葉が途切れたほんの数秒。

その言葉はスローモーションのように、ゆっくり夜の底へ落ちていった。

あの人からの花束に添えてあったメッセージには

”メリークリスマス・・(中略)”っと書いてあった。

私の欲しいものは自由に愛し合える心だ。

どんな時でも、相手に求められたら飛んでいける羽根がついた心だ。

 

「ひとり、思いっきり泣ける言葉」 吉元由美 著

<あらすじ>

あの人の前で、流せなかった涙がある──

誰にも言わない、でも誰かに知ってほしい、この気持ち。

人気作詞家・吉元由美が贈るハートフル・メッセージ。

あなたのそばに置いておく本。

 

<感想>

まさに吉元ワールド。

優しい彼女の言葉は、心のひだに優しく言葉を染み込ませてくれる。

どうしようもない気持ちで眠れない夜。言葉にもならない思いで、心が押し潰されそうなとき。そんな時に吉元由美さんの言葉は心の中のつらい気持ちを洗い流してくれる。

傷ついた自分から立ち直るためには、悲しみや淋しさという荷物から解放たれるためには、

思いっきり泣くことが大切だと吉元由美は言う。

涙には不思議な浄化作用があって、身体から悲しみ・淋しさを涙という形で流してしまえば随分心は軽くなるっと。

 

「ひとり、思いっきり泣ける言葉」より 好きな文

"たった一度だけ"

あなたのことを好きでいようと決めたら

とても穏やかな気持ちになった

友だちのままでいられませんか?

愛にいちばん近い友だちのままで

好きになってしまったことを私の人生から消せないから

だから友だちのままで一度だけのくちづけをかわし

一度だけ胸に抱かれて眠った

その短い時間の中で何年も何十年も生きようと思った。