湊 かなえ

「山女日記」 湊かなえ 著

<あらすじ>
私の選択は、間違っていたのですか。
真面目に、正直に、懸命に生きてきたのに・・・・。
誰にも言えない苦い思いを抱いて、女たちは、一歩一歩、頂きを目指す。悩める7人の胸に去来するのはー。
妙高山(新潟)ーこんなはずでなかった結婚
火打山(新潟)ー捨て去れない、華やいだ過去
槍ヶ岳(長野・岐阜)ー父に言ってしまったあの言葉
利尻山(北海道)ーぬぐいきれない姉の劣等感
白馬山(長野・富山)ー夫から切り出された別離
金時山(神奈川・静岡)ー突然見失った将来の目標
トンガリロ(NZ)ーいつの間にか心が離れた恋人

<感想>
湊かなえさん、私的には2冊目。
最初に読んだのが「告白」で本屋大賞、ミステリー大賞等を獲った上、映画化までされた小説だったので、勝手に湊小説のイメージは、サスペンス、ミステリーだと思っていましたが、この短編連作小説はまったく違う小説でした。
主人公たちは皆、等身大の女性。私であり、私の周りにいる誰かです。「告白」で感じられなかった”共感”がこの小説にはたくさんありました。

この本を読んだきっかけは、まさに私が今、「山ガール(笑)」に進化している途中段階だから(笑)
まだ、山にのめり込むまではいかないものの、山に登る前に漠然と感じていた、”山登りってしんどいだけちゃうの?”や、”登りきれるんやろか”と言う不安は少し薄らいできたところ。
そもそも、私の山登りのきっかけは「屋久島で縄文杉を見ること」。なので、この目標を達したら、やめるつもりだった。
しかし、だ。最近、(山登り、続けて行くのかな?)と思うこともあり、自分でもこの先、どうしたいのか、わからない。山を愛する気持ちも薄いし、他に強く登りたい山があるワケじゃない。むしろ、山の知識がなさ過ぎて、どうしたもんか?と言うまさに宙ぶらりんだった。そう、この小説を読むまでは。
読破した今、たぶんこの先も山登りを続けて行くんだろうなと思っている。すごい変化。
山の描写、景色の描写を読みながら、ワクワクしたのだから不思議だ。きっと山登りを経験せずにこの小説を読んでいたら、この感情は生まれなかったと思う。そして今は素直に読んだ山々に登りたいと思っている。
本気で近いうちに「トンガリロ」へ行こうと思う。

「妙高山」
デパートで働いている同期りっちゃんと由美。デパートでのアウトドアフェアがきっかけで、結局ふたりで初登山することになった。妙高山と火打山を続けて登る縦走で、百名山2つを一気に登れる人気のコース。
このまま結婚していいのかと迷っている=りっちゃんと、不倫している=由美の話。
私には、りっちゃんの悩みは幼すぎ、由美の悩みは、部長に良いように使われている都合のいい女になってるよ!って感想。
「火打山」
私と同世代の付き合いはじめたばかりの神崎さんと美津子さんの話。
美津子さんのラストに明かす彼女のほんとうがすごく良かった。
そして、火打山、登りたくなりました。
「槍ヶ岳」
父親が山登りが好きだったことで登山にハマった主人公。大学時代も山岳サークルで登山を楽しんでいたけれど、彼女はずっと単独登山の方が楽だと思っていた。槍ヶ岳を目指すのは今回が3回目。しかし過去2度とも、槍の肩まで登っているのに、頂上に達することができなかった。それは両方同行者のトラブルが原因。3度目の正直で、主人公はひとりで槍ヶ岳の頂上を目指していたのだが、ひょんなことから、おじさんと、おばさんと頂上を目指すことになってしまった。主人公の心の葛藤と、そこから見えた、気づいていなかったことがわかりだす-。主人公の心の変化が良かった。
「利尻山」
妹の気持ちを中心に書いた姉妹の話。
相手が放った言葉を人は、自分の感情や感覚で理解してしまうところがあるんだよなぁと感じた。
利尻山へとても登ってみたくなった。
「白馬岳」
「利尻山」の姉妹の姉目線の話。妹と娘:七花と3人で登る白馬岳。
白馬岳に登ってみたいと言う気持ちになった。登山の途中で、食べるチョコレートの意味、ランチで飲む珈琲の魅力。そして、山でメンバーと食べるランチの魅力が少し理解できたように思う。
「金時山」
「妙高山」で登場したりっちゃんと由美の同僚舞ちゃんの話。小学生の頃から大学までバレー一色だった舞ちゃん。中高とも強豪校で活躍し、大学もバレーに打ち込んだスポーツウーマン。しかし、結局日本一を手にすることなく、ケガで引退することになってしまった。舞ちゃんはそれ以後、打ち込めるものがない。そしてどうしても1番になることを欲してしまう性格になっている。それに気づかせてくれたのは、売れない役者を続けるカレシ。カレが見せてくれた低いハイキングのような山から見る、富士山。
それを見て、彼女が気づいたことが良い。山が自然がそうして教えてくれるのかも。
「トンガリロ」
この話が1番好き。そして、連作短編の魅力を味わえる作品。湊さん、巧い。
NZ北島には旅行したことがある。そしてトンガリロを横目にロトルアで宿泊した。こんな素晴らしい山を私は素通りしたんだと思うとものすごく後悔と共に、もう1度行きたいと強く思った。
他の短編の登場人物が出てくるが、帽子屋のユズキがここで登場。彼女の過去の話はすごく良かったと同時に胸の奥がぎゅっとなった。どれだけ好きでもそのときにそれを上手く伝えられず、理解されないと運命は分かれてしまうんだろうなぁ~と。
トンガリロ・クロッシング」が私の次の大きな目標になった。

 

「告白」 湊かなえ 著

<あらすじ>

「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」

我が子を校内で亡くした中学校の女性教師によるホームルームでの告白から、この物語は始まる。語り手が「級友」「犯人」「犯人の家族」と次々と変わり、次第に事件の全体像が浮き彫りにされていく。衝撃的なラストを巡り物議を醸した、デビュー作にして第6回本屋大賞受賞のベストセラー。

 

<感想>

この小説はやたらと評判が良かった。

賞も「09年本屋大賞1位」「週刊文春08年ミステリーベスト10、第1位」

「ミステリが読みたい09年度版、第3位」「このミステリーがすごい!09年版、第4位」など肩書きだけでも相当なもの。

なので、気になりつつも、読む気分になれず放置していましたが、文庫化され、映画化までされたので今回チャレンジ。

読み終えた感想は、とてもセンセーショナルな設定を使って、心理戦で「復讐」を描いた作品だなと言う感じです。

複数の、立場が違う人たちがひとつの事件について章ごとに語っていく設定は、面白くはあったけれど、リアリティが少し欠けていて、絵空事のような印象でした。

それこそ映画なら映像としておもしろいかも知れませんが、小説だとリアリティ感が強い程に恐怖感が増すので、その部分が薄いミステリーとも言えます。

ある種、娘の死をきっかけに倫理観などを中学生に語るのが常識だろうところを、センセーショナルな設定をすることで不謹慎ながらエンタテーメントとして置き換えている感じです。

愛娘を殺された女性教師が感情を抑えて語る冒頭のシーン。冷静に語られれば語られるほどに恐怖感を煽ります。

また、後半部分で事件と関わったふたりの少年にとって、「母親」の存在がどのようなものだったかについてかなりの書かれています。

「母親」がどれだけ大切な存在であるか、母親の言葉、表情、行動がどれだけ子どもに影響を与えていたか・・・的な表現なのですが、どうもそこが気に入らない。

子どもにとってそこまで母親の影響って大きいんでしょうか?

自分は娘であり、現在2児の母。それなりに一生懸命に子どもを育ててきたつもりだし、育てているつもりだけれど、その部分にスポットを当てられると非常に怖くなります。私の一言や、ふとした態度がこれほどまでに敏感に影響を受けているとしたら、こんなに恐ろしいことはありません。

気持ちのいい小説とは思いませんでした。センセーショナルな設定に対してはHIV感染=死を感じさせるような表現も多く見られ、HIVとエイズの扱い方もイヤな印象です。

人を赦すことについて書かれた小説は過去に読んだけれど、このような読後感の小説はめずらしいかも知れません。そう考えるとこの小説は私の中に衝撃を与え、疑問を感じさせるなど心を大きく波立たせたと言う点では成功しているのかも知れません。