藤岡 陽子

「いつまでも白い羽根」 藤岡陽子 著

 

<あらすじ>

「人の好き嫌いってなんだと思う?生きる姿勢なんだと思うんだ」

家庭の事情から行きたくもない看護学校に入学した瑠美。いつ辞めようかと思いながらも看護の勉強を続ける。不器用だけど天真爛漫な千夏。家庭がありふたりの子持ちの佐伯。謎めいた美少女の遠野。いろんなクラスメイトと共に過ごす中で瑠美はいろんなことを経験していく。

この時代にこそ必要な文学の大きな役割を堂々と担った、正統派大型新人、堂々のデビュー作。

 

<感想>

この感情をどう表現したらいいのか。

自分の看護学生時代とこの小説がかぶって、甘く苦く切ない気持ちとこんな過酷な世界を越えてきたんだなーと言う自負を感じた1冊だった。

その小説は看護学校の現実をリアルに描いている。それもそのはず、著者の藤岡さんは慈恵看護専門学校を卒業した経験があるからだ。

恐ろしいほどの量のレポートに提出物、学生でありながら、失敗が許されない厳しい世界へと実習に出される20歳前後の少女がはじめて直面する患者さんは年齢もさまざまで、死に直面する人、永遠に病気と闘い続けなければならない人などがいる。

あの頃、看護師になる決意が自分にどれだけあったかわからない。少なくとも私は親に啖呵を切って学校を選んだ以上、(ケツを割るワケにいかない)と言う意地もあってこの道に踏みとどまった部分もあった。

ライバルでもある友だちとぶつかり合い、励まされながら「自分」と言う存在を知り、自分に「自信」を持つことも覚えた時代だったと思う。

心をこめて必死で勉強して看護をしても、患者さんからは結局「ほんとうの信頼」は得られず、理不尽なことで先輩ナースに怒られるうちに(1日も早く一人前のナースになりたい!)と強く思ったものだ。

この小説にも書かれているように、こんな演習って必要?と思うことも多いし、先輩ナース、学校の先生からのいびりも実際、あった。けれど、今となればあの時の経験は自分の糧となっているし、ムダではなかったと思う。

この年齢になり、自分の子供が職業を選ぶ年齢を迎えてた。ママ友だちの娘さんは「看護師を目指している」と言う。小説を読むとこんなハードな学生生活を送る自信がないと思われるかも知れない。実際、私が読んでもそう思ったぐらいだ。だけど、当事者なら越えてゆけるものだと思う。私も必死でただ前だけを見つめて走っていたと思う。

これから職業を選択しようとしている高校生や大学生、思うような人生を歩めずに迷っている人に読んでもらいたい1冊だ。