東野 圭吾

「夜明けの街で」 東野圭吾 著

<あらすじ>

幸福な家庭で起きた殺人事件。まもなく時効の時を迎える。

僕はその容疑者と不倫の恋に堕ちた―。

この恋はどこまで続くのだろうか。

不倫するやつなんて馬鹿だと思っていた。

ところが僕は、その台詞を自分に対して発しなければならなくなる。

ただし、その言葉の後に、こう続ける。

でも、どうしようもない時もある。

緊迫のカウントダウン、衝撃のラストシーン。著者渾身の最新長編小説。

 

<感想>

東野圭吾作品にしては珍しく、恋愛(不倫)を前面に出した一応ミステリー小説。

ラストの真相がわかるくだりは「東野圭吾らしさ」が出ていたけれど、「渾身の・・・」と言うのは残念ながら過大広告だろう。それでも、最後まで飽きさせずに読ませるところはさすがの東野圭吾。彼の作品には80点以上の期待を入れて読んでしまうので、どうしても辛口批評になってしまうが・・。

「不倫小説」として読んだ場合、主人公の渡部が40歳超の男にしては情けないほど子供っぽい。故に魅力を感じない。ヒロインの秋葉が惹かれた理由もわからないからサラッと読んでしまう。しかも、妻子を裏切っての不倫がこんなに上手くスムーズにできるワケがない。

奥さんも出来過ぎ。ま、夫婦のドロドロ・もめ事を入れるとStoryの主旨が変わってしまうから「きれい事不倫恋愛」に終始したのだろうけれど。

不倫ものなら番外編の「新谷くんの話」の方が断然リアルで怖おもしろかった。

じゃぁ、「時効目前の事件ミステリー」で読ませるか?と言えばこれはもっと薄い。

最初から身内での事件だし、出てくる関係者も魅力がない。

と、文句ばかり書いてしまうが、ラストで秋葉がいい女で終わるところと

妻がとても頭のいい女だったと言うところで及第点としよう。

 

「宿命」 東野圭吾 著

<あらすじ>

高校時代の初恋の女性と心ならずも別れなければならなかった男は苦闘の青春を過ごした後、警察官となった。男の前に十年ぶりに現れたのは学生時代のライバルだった男で、奇しくも初恋の女の夫となっていた。刑事と容疑者、幼なじみのふたりが宿命の対決を果たすとき、余りにも皮肉で感動的な結末が用意される。

 

<感想>

第1回刷りが1993年の作品。私が買った文庫本は14年で58刷りになっていた。東野圭吾はそれだけ皆に読まれているのだ。

本作品は、私には少々おもしろみにかけ、なかなか読み進められない部分があったけれど、「サナエ」と言う女性の謎を最後までひっぱったり、題名の「宿命」をラストで繋げてくるところはさすが!の文章力。

本作は、「変身」と似た空気感で「脳」を題材にされた作品。同じ時期の作品なのではないかと思う。「変身」が好きな人には満足行くだろう。

 

「赤い指」 東野圭吾 著

<あらすじ>

犯罪を超えたその先に、本当の闇がある。二日間の悪夢と、孤独な愛情の物語。「この家には、隠されている真実がある。それはこの家の中で、彼等自身によって明かされなければならない」。「早く帰ってきてほしいんだけど」。前原昭夫が、妻から切羽つまった様子の電話を受けたのは、金曜の夕方だった。重い気持ちで家に帰ると、庭に幼い少女の遺体が。部屋に閉じこもる息子のやったことなのか。

事件と向き合うことで昭夫は、家族と向き合うことになるが──。

 

<感想>

発売当初、買う気はなかったが本屋で何気に3ページほど読んで無性に読みたくなり即買い。

久々すっーっと入り込んでスラスラ読み終えてしまった。

本作品は推理小説でなく、社会派の重いテーマを扱いつつ、読みやすいエンターテイメント性を加味した作品だと思う。「期待はずれ」と言う感想も聞くが、私は心に響くものがあった。確かに後半のどんでん返しも意表をつくものではなかったが、子供を育てると言う事・子供との関係・老いた両親との問題など、30代以上の世代には考えさせられるテーマである。とにかく、前原直巳と言う中3の息子の行動のひとつひとつがムカツク。しかし、こんな少年は世の中にいっぱいいるのだろう。また、この息子をここまでにしてしまったバカこの上ない母親も。何もかもから逃げ通して今日まで来た父親もあまりの愚かさにやるせなさが溜まる。

この小説には加賀恭一郎が登場。残念ながら、私は過去の加賀恭一郎登場作品を1冊も読んでいないので、加賀恭一郎作品として楽しむことが出来ず残念だったが、加賀恭一郎健在と言う謎解きだったと思う。

 

「容疑者Xの献身」 東野圭吾 著

<あらすじ>

天才数学者でありながら冴えない高校教師に甘んじる石神は、愛した女を守るため完全犯罪を目論む…。数学だけが生きがいだった男の純愛ミステリー。『オール読物』連載を単行本化。

 

<感想>

さすが東野圭吾!と唸ってしまった。小説の読み始めは大切だと思う。

読書が好きな私でもどうしても読み始めがツライ、入り込めない小説は挫折してしまうことが多いからだ。

東野圭吾の作品にはまずコレがなく本にすっと入れる上、小説の中に散りばめられる伏線に引き込まれ読み止めることが出来ない。

本作品は素晴らしいミステリーであり、男の愛の深さを存分に味わう事ができる1冊。

ラストまで読むとトリックの解明と石神の深い愛情を知ることが出来る。

 

「白夜行」 東野圭吾 著

<あらすじ>

1973年、大阪の廃墟ビルで一人の質屋が殺された。容疑者は次々に浮かぶが、結局、事件は迷宮入りする。被害者の息子・桐原亮司と、「容疑者」の娘・西本雪穂。暗い眼をした少年と、並外れて美しい少女はその後、全く別々の道を歩んで行く。二人の周囲に見え隠れする、幾つもの恐るべき犯罪。だが、何も「証拠」はない。そして19年・・・。息詰まる精密な構成と叙事詩的スケール。

心を失った人間の悲劇を描く、傑作ミステリー長編!

 

<感想>

私の中で東野圭吾氏の小説のNo.1はダントツで「白夜行」。のめり込んで読んだ。

ミステリー中心に軽めからノワール色の強いものまでいろんなタイプの小説を書いている東野氏だが、ノワール系小説好きはこれを読まずして東野圭吾を語るな!と言い切れる。

単行本の厚さ3.5センチ、854ページ。

読む気力さえ失せそうな重厚な本を手にして途方に暮れる間もなく一気に読みほした。

「幻夜」と違い小説の中で雪穂と桐原亮司との直接接点がないため、いつどこで繋がるのか?が読み進めてしまうきっかけになったし大学時代のダンス部の篠原一成との関係もどうなるのだ?と期待してしまった。

 

以後、ネタバレ

 

 

結局、雪穂と亮司は接点がないまま状況証拠だけで終わってしまうし、篠原一成との関係も雪穂はどう思っていたのか謎のまま。亮司にしても雪穂を愛していたからこその関係だったかどうかも利用した彼女とのセックスの記述のみで想像するしかない分、想像する、させると言うところがこの小説の最大の魅力なのかも知れない。普通、ここまではっきりさせずに謎を残して終わると「中途半端やで」と怒りも湧きそうなのにこの小説に限ってそれがないのはナゼだろう?それが東野氏の筆力なのだろうか。

 

「片想い」 東野圭吾 著

<あらすじ>

大学時代のアメフト部のマネージャーと十年ぶりに再会した哲朗は美月を見て驚く。美月は男の姿をしていた。彼女から、殺人を告白された哲朗は、美月の親友である妻とともに、彼女をかくまうが…。十年という歳月は、かつての仲間たちを、そして自分を、変えてしまったのだろうか。過ぎ去った青春の日々を裏切るまいとする仲間たちを描いた、傑作長篇ミステリー。

 

<感想>

小説のタイトルは「片想い」だが内容は恋愛ものと趣が違う。性同一性障害やトランスジェンダー(性同一性障害者のうち、解剖学上の性とは逆の性での社会生活を行うが外科的手術までは望まない人)について真っ正面から挑んだ作品である。

この小説を東野圭吾作品のNO.1にあげる人も多いようだが、私は彼の作品の中で好きでない小説の部類に入る。ただ、好みでない内容でも最後まで読ませてしまう文章力は圧巻。

ミステリー(分類はそうなるようだ)として性差の話を中心に仲間達の友情や妻との関係なども含めて進むところがこの小説の魅力かも知れない。

 

「幻夜」 東野圭吾 著

<あらすじ>

1995年、西宮。未曾有の大地震の朝、男と女は出会った。美しく冷徹なヒロインと、彼女の意のままに動く男。女の過去に疑念を持つ刑事。彼女は一体誰なのだ…。

 

<感想>

東野圭吾は本当に上手い。とにかく引き込まれる。時間がない中で読む毎日なので(この章まで読んだら今夜は寝よう)と思うのだが気づいたら次の章まで読んでいる事が何度もあった。

幻夜は「白夜行」の続編とも裏小説とも言われている。

私は「白夜行」を読まずに先の「幻夜」を読んだが十分読み応えがあった。

さて内容(ネタバレ含む為注意)

美冬がナゼここまでして上を目指したのか?彼女はどこへ行きたかったのか?

結局、その部分の確信を理解できないままに小説を読み終えてしまった。しかもラストはあんな形。雅也の置かれた境遇や雅也の感情が理解できただけにもう少し美冬について深く掘り下げて欲しかった気がする。

追記

「白夜行」を読んだ。

「白夜行」は最初から最後まで雪穂と亮司の接点が全くない。

ふたりは何を共有し、どこで連絡を取り合い、ナゼそこまでの関係を結んでいるのか?

それを全く示さない怖さがあった。その分読後、「接点」についての部分を読みたかった気持ちが残った。

逆に、続編・裏小説とも言われている「幻夜」は(接点)を前面に出している。

そう言う読み方をするとまた違った楽しみ方もできるなと思う。

 

「ゲームの名は誘拐」 東野圭吾 著

<あらすじ>

広告代理店でイベント企画をしている佐久間駿介が、

取引先の副社長を相手に仕掛けた「狂言誘拐ゲーム」。

駿介の計画は、完璧に遂行されるのか?

 

<感想>

さすがの東野圭吾作品。

癖がなく読みやすい文体に、登場人物の性格が読者にも伝わる文章力はさすが。

誘拐ゲームが巧くいったように見せて、誘拐した当事者に謎が浮上。

主人公が混乱するあたり、二転三転と楽しめる。

矛盾もあるけど、それも気にならない程のスピードで楽しめる。

 

「手紙」 東野圭吾 著

<あらすじ>

武島直貴の兄・剛志は、弟を大学に入れてやりたいという一心から、盗みに入った屋敷で、思いもかけず人を殺めてしまう。判決は、懲役15年。それ以来、直貴のもとへ月に1度、獄中から手紙を送る剛志。一方で、進学、恋人、就職と、つかもうとした人生の幸福すべてが「強盗殺人犯の弟」というレッテルによって、その手をすり抜けていく直貴。日を追うごとに、剛志からの手紙は無視され、捨てられ、やがて…。

 

<感想>

読み終わったあと、深かったなぁ~と・・・。

東野圭吾さん、最近「死」「罪」についてなかなか深いものを書かれてる。

明るい話ではないが、濃密に書いているのに息苦しさを感じさせすぎず、ぐっと心に迫るところはあり、ぐいぐいと最後まで読ませるあたりが、非常に巧いと思う。

読んで良かったと思う1冊。

 

「殺人の門」 東野圭吾 著

<あらすじ>

あいつを殺したい。 でも私には殺せない。

人が人を殺すという行為は如何なることなのか?どうしても殺したい男がいる。その男によって、私の人生はいつも狂わされてきた。あいつを殺したい。でも、私には人を殺めることがどうしてもできない。殺人者のなるために、私に欠けているものはいったい何なんだろう?20年もの間、くすぶり続ける殺意。殺人者になりきれない男は、果たして「殺人の門」をくぐることができるのだろうか!?

 

<感想>

長編小説を丸2日で読み切ってしまった。

そんなのおもしろかったか?と言うとそうではない。

読んでいてワクワクしたワケでも、主人公とキモチが同化したワケでもない。

ただ、この主人公はラストで「殺人の門をくぐったんだろうか?」と言う1点を知りたくて

読み進んだのだと思う。

結果をここで書くわけにはいかないけれど・・・。

最近、勝ち組・負け組などと言われているが、そんなものあるワケがないと思う。

が、実際は現実社会にある。まさに、生きていく術を身につけている男・倉持に主人公・田島は人生をコントロールされたのだろう。それが歯がゆくて、虚しくて哀しい。

読んでいた私の方が「倉持を殺ろしたい」と思う程。

そのぐらい読者に倉持を憎くさせるあたり東野圭吾の罠に私がハマったと言うことか・・・?

 

「変身」 東野圭吾 著

<あらすじ>

平凡な青年・成瀬純一をある日突然、不慮の事故が襲った。

そして彼の頭には世界初の脳移植手術が行われた。

それまで画家を夢見て、優しい恋人を愛していた純一は、

手術後徐々に性格が変わっていくのを、自分ではどうしようもない。

自己崩壊の恐怖に駆られた純一は自分に移植された

脳の持主(ドナー)の正体を突き止める。

 

<感想>

最近、売れっ子作家である東野圭吾。

この作品が私の東野圭吾の初めての小説。

脳移植が題材で興味をそそられた。

自分が知らない間に誰かに支配されてゆく・・・

実際に脳移植があれば、そんなことが起こるのではないかと想うほどのリアルさがよかった。

しかし現実には脳移植などは不可能とされている