貫井 徳郎

「微笑む人」 貫井徳郎 著

<あらすじ>

エリート銀行員の仁藤俊実が意外な理由で妻子を殺害、逮捕・拘留された安治川事件。犯人の仁藤は世間を騒がせ、ワイドショーでも連日報道された。この事件に興味をもった小説家の「私」は、ノンフィクションとしてまとめるべく関係者の取材を始める。

周辺の人物は一様に「仁藤はいい人」と語るが、一方で冷酷な一面もあるようだ。さらに、仁藤の元同僚、大学の同級生らが不審な死を遂げていることが判明し……。

仁藤は本当に殺人を犯しているのか、そしてその理由とは!?

 

<感想>

貫井徳郎氏との出会いは「慟哭」。これは今でも衝撃だった記憶がある。この「慟哭」がきっかけで小説家として名が売れたと記憶してる。貫井氏の文章運びが好きでその後も何冊か読んでいるが「慟哭」を越える小説にはまだ出会っていない。

本書の帯で「ぼくのミステリーの最高到達点です」とあったので、ワクワクして読んだ。

ん~、これが最高到達点なんて言って欲しくはないけれど、しかしながら引き込まれた一気に読みました。

コレ、評価の分かれる小説じゃないかと思います。

この本を読もうと思っている方、一切の先入観なしに読んだ方がベターです。

以下 ネタバレあり 

結論、

「人がその行動を起こした意味など、そのひとでないとわからない。もしかしたら、それをやった本人でさえ、それを納得できるように説明できないものかも知れない」

と言うことなのだろう。確かにそうだと思う。この落としどころを(なんやねん!)と言ってしまえばこの本の結末は、エエ加減な落としどころの小説となってしまうだろう。しかし、視点を変えて、読後の(もやもや感)を与えたかったんですよって言うのなら、ほんとうにモヤモヤしています。だったら狙いどおりなのかな?

できるなら最後にもう一度”ショウコ”と言う名前を仁藤に向かって投げかけ、その反応を書いて欲しかった。

 

「崩れる ~ 結婚にまつわる八つの話」 貫井徳郎 著

<あらすじ>

・崩れる

こんな生活、もう我慢できない・・・。

自堕落な夫と身勝手な息子に翻弄される主婦の救いのない日々。

・怯える

昔、捨てた女が新婚家庭にかけてきた電話が引き起こす事件。

・憑かれる

突然、高校時代の友人から招待された披露宴での奇妙な出来事。

・追われる

結婚相談所に勤める主人公を襲うストーカー的恐怖感を描いた話

・誘われる

公園デビューした若い母親を苦しめる得体の知れない知人。

・腐れる

マンションの密室から臭う腐臭・・・。

・見られる

怠惰な暮らしをするOLの犯している、なんでもない日常の罪を題材にした話。以上 八篇。

平穏な日常にひそむ狂気と恐怖を描き出している。

平凡で幸せな結婚や家庭に退屈しているあなたへ贈る傑作短編集

 

<感想>

貫井徳郎は私より1学年下である。

同学年のあまりのすばらしい才能に驚くばかりである。

また、かなり先見の目があるようで、この『崩れる』にまとめられている短編は、

どれも’95年前後の作品で今から6年前であるが、

すでにストーカー問題などを題材にしているとことがすごいと思う。

 

「慟哭」 貫井徳郎 著

<あらすじ>

連続する幼女誘拐事件の捜査は行き詰まり、

操作一課長は、世論と警察内部の批判を受けて懊悩する。

異例の昇進をした若手キャリアの課長をめぐり、

警察内の不協和音が漂う一方、マスコミは彼の私生活に関心を寄せる。

こうした緊張下で事態は新しい方向へ!

幼女殺人や怪しげな宗教の生態、現代の家族を題材に、

人間の内奥の痛切な叫びを、鮮やかな構成と筆力で描破した本格派長編小説。

 

<感想>

貫井 徳郎のデビュー作品である。

小説家を志し、賞を取るために書き下ろされた作品で、貫井徳郎自身も自分の作品を読むなら、まずこれを読んで欲しいと発言しているし、

私自身もコレがカレの原点なのだといつも思う。

ストーリーは読めなくもなく、このあたりに落ち着くのだろうなと感じさせながらも、でも 違うのかな?どこへ落ち着くのかな?っと何度も思わせる作品。

私よりも1つ年下の作家、貫井徳郎。

彼の才能のすごさを実感させられた作品。

 

「神のふたつの貌」 貫井徳郎 著

<あらすじ>

牧師の子に生まれ、神の愛を一途に求めた少年。

もっとも神に近かったはずの魂は、なぜ荒野を彷徨うのか?

ミステリーの限界を超えた新世紀の「罪と罰」!

教会の牧師の息子に生まれ、将来は父の跡をつぎ、

神に仕える人生を送ることにいささかの疑問も感じない主人公・早乙女。

一途に神の愛を求めたはずの少年が、なぜに恐るべき罪を犯すのか──。

地方に代々続く教会を舞台に、神とは何か、罪とは何か、

人間にとって救いとは何を意味するのか、といった

大きなテーマに正面から取り組んだ、かつてない野心的なミステリー。

 

<感想>

彼のミステリーは骨があってすきだ。

その彼の久々の渾身作。

結局話が過去→←現在を行ったり来たりしていたようで、

その理解を得るまで、少々理解しにくい面はある。

私は、貫井氏がどう言おうと「慟哭」の方がすきだ。

なぜ主人公は<闇>を持ってしまったのか・・・

なぜ? ここが解消されないとなぁ~っと言う気持ちだ

 

「光と影の誘惑」 貫井徳郎 著

<あらすじ>

銀行の現金輸送を襲え。目標金額は一億円。

平凡で貧しい日常に鬱屈するふたりの男が出逢ったときに、悲劇の幕は上がった。

巧妙に仕組んだ現金強奪計画。すべてがうなくいくように思えたのだが・・・。

男たちの暗い野望を描く、表題策ほか、平和な家庭を突如襲う児童誘拐事件、動物園の密室殺人、家族の秘密・・など

身本格の旗手が鮮やかなストリーテーリングで魅せる、傑作ミステリー中編四編。

 

<感想>

「慟哭」を読んで以来、若手のミステリー作家では一目おいている貫井氏の中編小説。

私の見解では、貫井氏は中編小説より、長編小説の方が向いていると思ってる。

今回の作品は中編小説が4編。

1編目ー「長く孤独な誘拐」

2編目ー「二十四羽の目撃者」

3編目ー「光と影の誘惑」。

これは表題作。最初から何かを含んでいるなっと思いながら読んでいて

想像に近い結果だったけれどラストは唖然と言う感じ。

4編目ー「我が母の教えたまいし歌」。この本の中で私が1番いいなと思った作品。

途中で仕掛けられた罠は読めたけど、ソレを最後にバラされる時の爽快感は「やっぱりねぇ~、恐ろしい」っと言う感じ。

重い貫井徳郎を知ってもらうには、やはり「慟哭」がお薦めだけれど悪くない単行本。

 

「追憶のかけら」 貫井徳郎 著

<あらすじ>

最愛の妻を亡くした大学講師。

失意の底にある彼の許に持ち込まれた、戦後間もなく自殺した作家の未発表手記。そこに秘められた「謎」とは。二転三転する物語は、感動の結末へ。若い世代を中心に、今最も注目されている著者が満を持して贈る、渾身のミステリー巨編。今年度ミステリー小説界話題必至の1冊。

 

<感想>

毎回書くが「慟哭」を読んで以来、私は貫井徳郎のファンである。

ミステリー作家なのに優しさが根底にいつもあり、殺人を繰り返すなどというハードな部分はほとんどなく、それでも「謎」を張り巡らして謎解きの楽しみを与えてくれる。

そんな彼だから絶対にはずすことはないだろうと信じて読み始めた。

全470ページ中200ページほどが 『とある作家の自殺に至るまでの手記』 で綴られ読み応えある。

この過去の作家と一旗揚げたいと切実な野望を持つ大学講師の今をどう結びつけるのだろうかと期待したが、講師がハメられる罠の動機が私には納得できなくて、最後の最後、残念な気がした。

二転三転繰り返すラストは興味がそそられ読み止められないほどだっただけに・・・尚更。

けれど、貫井徳郎の文体が好きなら読んで損はないと私は思う。

 

「さよならの代わりに」 貫井徳郎 著

<あらすじ>

劇団の看板女優が殺害された。

僕は、事件直前に現れた謎の美少女と真犯人を追うことに。

不思議な魅力を持つ彼女が明かした、誰にも言えない秘密とは?

切なさが込み上げるミステリー。

 

<感想>

ミステリー+ファンタジーの印象。

「慟哭」が好きな私は貫井氏の重厚な文章が好きなワケで

この作品はサラッとした青春の香りがする文体に終始していて

明らかに今までと変えると言うことを意識して書かれたものだろうと思う。

しかしそれがの私の1番苦手な雰囲気の小説だったのでなかなか読み進められなかったし、ミステリーとしての謎も ん~・・と思ってしまった。

ただ未来から来たと言う少女が話す。

「変えようと思っても未来は変えられない」的部分は良かったかな。