西川 美和

「きのうの神さま」 西川美和 著

<あらすじ>

日常に潜む人間の本性を渾身の筆致で炙りだした短編集。

映画『ディア・ドクター』に寄り添うアナザーストーリーズ

 

<感想>

映画監督である西川美和氏の書き下ろし小説と言うことで、映画「ディア・ドクター」の原作があると思い期待してたのに、本書にはなし。(怒)期待してたのに。

「ゆれる」は小説と映画が同じだった。明るいテーマではなかったけれど、小説を読んで私が感じた「ゆれる」の感覚と、西川監督の作る映画「ゆれる」の一致点や、相違点を感じられてとても良かっただけに、今回楽しみにしていたのに、小説と映画は全く違う上に、どの短編小説も何かが足りなくて不満足のまま読み終えてしまった。

とは言え、5つの短編の内、「ありの行列」と「ディア・ドクター」(映画とは内容が違う)この2編にはセンスを感じた。

 

「ゆれる」 西川美和 著

<あらすじ>

兄弟をめぐる もうひとつの物語。

東京でカメラマンとして活躍する弟。

実家に残り、家業と父親の世話に明け暮れる兄。

対照的な兄弟、だがふたりは互いに尊敬していた。

あの事件が起こるまでは・・。

 

<感想>

映画「ゆれる」のノベライズ本。

私にとって、初のノベライズ本読破となった。

今までノベライズは小説ではないと思っていたし、映画・ドラマ制作の基本プロットとしてあるものだと思っていたので読む必要を感じなかったのだが、「ゆれる」と言う題名が心を惹いた。立ち読みをしても先を読みたくなる。

本作は一人称の告白スタイルで進む。

読み終わった今、映画を無性に観たいと思う。この感覚は何だろう。

盆地にある田舎の閉鎖的な空気感がリアルに伝わる。

そこで暮らす事を拒否し、家を出た弟・猛。

残って家業を継いだ兄・稔の感情がナゼこんなにわかるのだろう?

この心がざわめく感覚は何なんだろう。

そんな事を感じながら一気に読んだ。

私は猛のように、子供の頃からいつか必ずココ(実家・田舎)を出ると決めていた。

何をするにも親の目、近所の目がある事が苦痛で仕方なかったのだ。

私にとって実家は息苦しく、生きにくい場所だった。

その反面、自分が田舎を捨てると言うことは

妹に全ての負担を背負わせることになるんだろうなと言う引け目も感じていた。

だから、猛の感情がわかる。

私の妹は、自分が全てを背負うことをしなかった。

私と同じ立場になったことで気持ちが多少なりとも楽になったことは否めない。

親は淋しいだろうけれど。

稔は、事件をきっかけに心の平均を失い、心の奥底にある感情が噴出してしまったのだろう。

なんとやるせない事だろう。

西川美和氏は脚本家であり映画監督。

若いのに素晴らしい才能の持ち主だ。

映画の配役を最初から知っていたからかも知れないが、

猛にはオダギリジョー、稔に香川照之はジャストマッチに配役と思う。

映画も観る予定。