天童 荒太 (てんどう あらた)

「包帯クラブ」 天童荒太 著

<あらすじ>

傷ついた少年少女たちは、戦わないかたちで、自分たちの

大切なものを守ることにした・・・。

いまの社会を生きがたいと感じている

若い人たちに語りかける長編小説。

 

<感想>

高校生が主人公で、映画化されていた時から、何となく気になっていた小説だった。

映画化されているため、主人公のイメージがどうしても固定されてしまうが、小説のイメージと映画のメインキャストはかなりナイスチョイスだと思う。

私が高校生だった時も、個人的な悩みや心の傷はあった。でも、ココまでナイーヴではなかったように思う。それは時代が違うのからなのだろうか?

でも、見たくないし、行きたくないと思う辛かった思い出のある場所はある。

10年ぐらいは、その場所の近くを車で通るだけで、毎回心が塞ぐような気分になった。

たまたま、私にはその気持ちを話せる人がいて、その「傷」をわかってくれなくても聴いてくれるだけで気分は楽になったし、

その道を避けようかと言ってもらえるだけで温かさを感じることができたから深い傷にならずに済んだのかも知れない。

小説の中に出てくる「傷を受けた場所に包帯を巻くだけで気持ちが軽くなった」と言う感情はわかる。

本作は、誰かと戦う話ではなく、人には理解されないかも知れないけど、

自分の中では心が血を流した出来事に自分がどう決着をつけるのかと言うことに重きを置いた作品となっています。

中高生にお勧めする1冊です。

 

「永遠の仔」 天童荒太 著

<あらすじ>

霊峰の頂上に登れば神に清められ自分たちは救われる。

そう信じた少女・久坂優希と2人の少年は、

その下山途中に同行した優希の父を殺害する。

3人は秘密を抱えたまま別れそれぞれの人生を歩んでいたのだが、

再開が地獄の扉を開き、17年の時を経てその「聖なる事件」が蘇る――。

救いなき現在の「生の復活」を圧倒的迫力で描くミステリー大作。

 

<感想>

久々に本を読んで胸が詰まったと言う小説。

この小説は上下巻に別れていて膨大な読書力を必要とするが、

途中でやめることができなくなる程の力を持っている。

子供は生まれて来る時は親や環境を選ぶことはけしてできない。

その事の重さを本当に感じる小説。

一見裕福で幸せそうに見える家庭も、親の心が蝕まれていると

その蝕みが子供にも影響する・・・。

子供を育てている立場にある私には痛い小説でもあった。

たまに重いテーマの小説を読んでみるのもどうでしょうか?

 

「ありふれた愛」 天童荒太 著

<あらすじ>

1歳半になる娘をかわいがる武史だが、

妻の一言に心が乱れる(「とりあえず、愛」)

コンビニで突然倒れ病院へ運ばれた男と

それを目撃した青年(「喪われゆく君に」) など、

人間の揺れ動く心情を映す4編。

 

<感想>

日常的や身の回りで繰り広げられていてもおかしくはないような話し。

冒頭の「とりあえず愛」は、音羽で起きた主婦の幼児殺しを思いおこさせるような内容。

また、仕事で体の感覚を無くした中年男、エリート教育に心を病んだ女性のよりどころなど

毎日の中でいつバランスを崩してしまうのかわからない不安定な感覚を書いた短編集だと思った。

天童荒太氏の小説は内容が重いだけに、軽い気持ちで簡単に読まないところがあるが、

その中でも「ありふれた愛」は軽い方だと思うので

重い事で敬遠しているのだとしたらこの本を入門書かなと思う。