雫井 脩介 (しずくい しゅうすけ)

「クローズド・ノート」 雫井脩介 著

<あらすじ>

文具店でアルバイトする教育学部の学生・香恵は一人暮らし。彼女の部屋に残されていた前住人の物らしい一冊のノート。小学校の先生の物だったらしい日記には子供達と接する日常生活と恋心が溢れている。ある日、香恵は自分のマンションの部屋を見上げる青年の姿に気づく。

 

<感想>

新刊を買うには勇気がいる(値段が高いから)。それでも買うには私の場合、2つの決め手がある。1つは作者の過去の作品に満足していること、2つめが装丁のデザインに魅力を感じるかどうか。同じような読者も多いだろう。だから最近では出版会社も作者も装丁デザインにこだわると聞いている。

本書を本屋で目にしたとき、装丁の美しさと題名にとても惹かれ手にした。作者が雫井氏とわかり即買い。予備知識のないまま購入。雫井氏=サスペンスのイメージだったが過去の作品とはまったく違う正攻法の恋愛小説に仕上がっていた。

読み始めて1/3程で明らかにされていない人間相関図も読めてしまい、ラストが早々に想像できてしまったがサスペンスでないので仕方ないかな。

主人公が天然タイプの大学生で子供っぽすぎるキャラクターだったので共感できず客観的に読んでしまった分、感動が減ってしまったがハマる人にはハマる小説だろう。

また、本書では万年筆が重要な小道具として詳しく出てくる。学生の頃、文具が好きだったことをほんのり思いだしながら、パソコンばかりの毎日に少し反省もした。自筆・万年筆・・このアナログな感覚は大切だと思う。

なお、<参考文献>の欄に本書が不慮の事故で他界された雫井氏の長姉の遺品をモチーフに書かれたものだと知った。雫井氏の長姉は結婚前まで小学校教員で、長姉の遺品の中のアルバムや文集・子供達からの手紙などを読み、その時感じた感慨をモチーフに書かれた作品だったらしい。それを知ると、本書とはまた違う感情を持つことができた。

 

「火の粉」 雫井脩介 著

<あらすじ>

有罪か?無罪か?手に汗握る犯罪小説の最高傑作!

自白した被告人へ無罪判決を下した元裁判官に今、「火の粉」が降りかかる。あの男は、殺人鬼だったのか?「お隣さん、本当にいい人ね」

元裁判官で、現在は大学教授を務める梶間勲の隣家に、かつて無罪判決を下した男・武内真伍が越してきた。愛嬌のある笑顔、気の利いた贈り物、老人介護の手伝い。武内は溢れんばかりの善意で梶間家の人々の心を掴んでいく。「なんか、いい人すぎない?」

 

<感想>

おもしろかった。

読むのをやめられなくなる程の勢いが文章にはあったと思う。

途中、若い母親と子供へのくだりがあるのだが、その部分だけは同じ境遇にあるからか、少々読む時に((イヤ~な気分))を味わった。

が、全体的には硬い部分と柔らかい部分を上手に混ぜた読みやすい小説だと思う。

私の見解ではミステリーのジャンルには入らない。

犯人が誰!?と言う疑問を解読していくStoryではないからだ。

それでも<人間の怖さ/愚かさ>には背筋が凍る感じはある。

ラスト・・・・・まぁこれしかなかったかな。

このラストだから人間臭い小説として収まっているのかも

 

「犯人に告ぐ」 雫井脩介 著

<あらすじ>

神奈川県下で連続児童殺人事件が発生。

特別捜査官・巻島史彦は夜のニュース番組に出演、公開捜査を敢行する。

姿見えぬ犯人との《対話》で事件は解決できるのか?

『小説推理』連載中から大反響を得た、スリルあり感動ありの斬新警察小説!

 

<感想>

読み応えがあった。

本書の終盤は途中でやめる事ができなかった。

過去の幼児誘拐事件と現在(いま)の幼児連続殺人事件を軸に

警察内部での人間関係や、社会の世論、ニュース報道の裏側なども練り込みながら話は進む。

視聴率を取る2つのニュース番組が出てくるのだけれど、

自分の中でイメージ(テレ朝とTBS)を想定して読んでしまっていた。

 

「虚貌 (きょぼう)」上下巻 雫井脩介 著

<あらすじ>

1980年、岐阜県美濃加茂で運送会社を経営する一家が襲わる事件が発生した。

家に火を放たれ、社長夫妻は惨殺、長女は半身不随、長男は大火傷を負わされるという悲惨な事件であった。間もなく、その運送会社を解雇された元従業員三人が逮捕され、事件は解決したかに見えた。だが、20年後、その事件の主犯と見なされていた荒勝明が仮出所したことから、終わったはず の事件が再び蠢き始めた・・・・。

 

<感想>

面白くて読み進め、物語が佳境に入ると早く先が知りたいと思う反面、

読み終わるのが惜しいと久しぶりに思った小説だった。

しかし、読み終わって時間が経つと、登場人物が多かったからか

それぞれの性格や生い立ちが詳細じゃなかった分、

ラストで淡々と過ぎた気がしたり事件の真相に足らないものを感じたりした。

が、けして面白くなかったワケじゃない。

本当に夢中になる程引き込まれるだけの魅力が十分あった作品だった分

(もう少し・・・)と贅沢に望んでしまうのだ。

雫井作品を3作品読み、どれもこれも好きな小説であるけれど、「虚貌」を私は1番勧める。

※ ネタバレ ↓

中盤までは息詰まる展開に興奮したが、

事件の真相を説くラスト1/3で突然のように有田三兄弟犯人説が浮上する辺りで

(ココで落ち着くの?)とがっくりと同時によく理解できず残念だった。