篠田 節子

「秋の花火」 篠田節子 著

<あらすじ>

彼の抱えた悲しみが、今、私の皮膚に伝わり、体の奥深くに染みこんできた一。

人生の秋を迎えた中年の男と女が、生と死を見すえつつ、深く静かに心を通わせる。

閉塞した日常に訪れる転機を、繊細な筆致で描く短編集。

表題作のほか、「観覧車」「ソリスト」「灯油の尽きるとき」「戦争の鴨たち」を収録。

 

<感想>

篠田節子さんの小説を読むのは久しぶり。

過去の読んだ作品から①福祉関係 ②クラッシック音楽関係 ③紛争地帯関係が得意分野だろうと思ったいたが、本書の短編5編はまさしく①~③を踏まえた短編となってる。

乗り切れずに読んだ作品もあるが「灯油の尽きるとき」は作品に入り込んで読めた。

5編を読んで根底に流れるのは、<その時>がすべてではない。

<そのとき>はけして嘘ではないけれど、真実でもないと言うことかと思う。

<秋>中年の男女のお話は他人事ではないな・・・

 

「死神」 篠田節子 著

<あらすじ>

8編の短編小説。

市の福祉事務所に勤めるケースワーカーの仕事はひと筋縄ではいかない。

難病、家庭問題、労働意欲の喪失、そして犯罪・・・

社会の基準からはみだした『弱者』にとって最良の道とは何なのか?

日々模索するワーカーたちの奮闘と遭遇する事件(ケース)を通して、

現代社会が抱える暗がりと人間本来の強かさを描ききる連作集。

 

<感想>

短編集としてはかなりおもしろい。

ケースワーカーの目をとおしての小説とは、

彼女のOL時代が反映されているわけだがいい題材だと思う。

福祉を受けるべき権利は日本国民には全員にある。

しかし、一生懸命に生きてきた老人が身内をなくし

天涯孤独になり福祉のお世話になるというのばかりでない。

仕事も努力もしないで福祉のお世話になり生きているひとも多い。

理不尽だと感じながらも見放すことのできないケースワーカー・・・。そんな話である

 

「インコは戻ってきたか」 篠田節子 著

<あらすじ>

大人にしかわからない「愛」と「裏」がある。たった6日間の極上の恋。

それぞれの人生を賭けた男と女の哀切なせめぎ合い。舞台は、東地中海のキプロス。歴史の怨念が、その島を目覚めさせ、島の南北を切り裂く緩衝地帯(バッファゾーン)は愛と炎のバッファゾーンとなった。

 

<感想>

篠田節子作品としてはしては、また違う切り口かなと言う印象。

主人公の響子がキプロス島へ取材へ行くことになったのも偶然。

取材先に来るべきカメラマンが変更になっていたのも偶然。

その取材で民族紛争に巻き込まれたのも偶然。

すべての<偶然>ははすべて<運命>となる・・・そんな小説。

初めて出会った男(カメラマン)と女(響子)。

お互いの過去も何も知らないで始まるけれど、それは1つの恋愛に発展し、6日間で完結する。

大人の恋はそういうものなのかも知れない。

出会ったふたりが恋に落ちるまでの時間の中で、お互いに抱える苦悩の<何か>を共有できたときひとは恋愛に落ちるのかも・・・。

 

「愛逢い月」 篠田節子 著

<あらすじ>

甘く切ない恋の至福のときは短くて、頂点を極めたあとには、ただ、

執着と妄想に満ちた永い時間が続くだけ・・・・・。

かつての恋人と共に、死者の世界を永遠にさまよう甘美な地獄を

幻想的な筆致で描く『38階の黄泉の国』。

出ていった男を待ち暮らす寂しい女の危うい心理を追う『ピジョン・ブラット』など、恋と、恋の残滓の中にひそむ、恐怖とサスペンスとミステリーを描く愛の終わりの物語全6編。

 

<感想>

短編集なので読みやすい。

6話の中には、好きな作風とそうでないのとがあるが、

私は、「秋草」「コンセプション」「柔らかい手」などが好き。

とくに、『秋草』では、秋草の描かれた金箔のはがれ落ちた襖絵に強く心惹かれる悦子を主人公に、逢うと情事は重ねるものの、男の心がとっくに自分から離れている、その寂しさを目の前の襖絵に見出してしまううちに情緒を崩してしまう悦子。

その悦子の想像を遥かに越えた行動にでる男を短い文章の中で端的に表現していると思った。

 

「女たちのジハード」 篠田節子 著

直木賞受賞作品。

 

<あらすじ>

中堅保険会社に勤める5人のOL。条件のよい結婚に策略を巡らす美人のリサ。家事能力ゼロで結婚に失敗する紀子。有能なOLでありながら会社を辞めざるをえなくなったみどり。自分の城を持つことに邁進するいきおくれの康子。そして得意の英語で自立をめざす紗織。男性優位社会の中で、踏まれても虐げられても逞しく人生を切り開いていこうとする女たち。それぞれの選択と闘いを描く痛快長編。

 

<感想>

5人の性格が小説の中でわかりやすく説明されているため、読みやすく、納得のできる人生を送りたいと進んでいく姿に引き込まれてかなりのスピードで読めた。

浅田次郎の「鉄道や」と直木賞を分け合った作品だがそれも納得できる気がする。

読んでいくウチに想像力が膨らむ小説で、もがいてももがいても尚、行く先には試練があると言うのは<現実>で、小説だからと夢物語にせず、最後まで綴っているところが良いと思う。

男性には女性の内面の不気味さを、女性には女性としての立場で読めるので20~30歳代の頃にぜひ読んで欲しいと思う。