砂田 麻美(すなだ まみ)

 

1978年生まれ。映画監督・ドキュメンタリー作家。

映画作品:「エンディング・ノート」「夢と狂気の王国」

「一瞬の雲の切れ間に」 砂田麻美 著

<本文より>
その時の健二さんの顔は、これで一生彼女と人生をともにすることになるのだという、得体の知れない恐怖と覚悟に満ちていた。私はそんな健二さんの顔を見るのが新鮮で、怖くて、なぜか苦しくなるほど、それを愛おしいと思った。果たして事故を起こしたのが私だったら、この人はそんな顔を見せてくれただろうか?

<感想>
購入したのは3ヶ月ぐらい前か・・・。たぶんネットで良いと言う評価を見て買ったと思う。
作者は、映画監督なのだそうだ(「エンディング・ノート」「夢と狂気の王国」)

5つの短編に分かれた小説は、繋がっている。
千惠子は出版社のOL。とは言え、それほど大きな仕事をしているワケではない。その千惠子と不倫関係にあるのが30代後半、大手出版社の勤務の健二。その健二の妻は美里。インテリアコーディネーターとしてフリーで仕事をしている。その美里が運転中、小3の男の子を車で撥ね、男の子は亡くなる。苦しむ美里と健二。そして不倫相手である千惠子も違う形で苦しむ。
吉乃は、事故で亡くなった男の子の母親。それぞれの視点で描かれたそれぞれの苦しみ。
そして最後の章は、誰だかわからない男の手紙で締めくくられていた。

ん・・・重いと言うのでもないが、心がぎゅっとなった。
読み始めの章「夏、千惠子の物語」は、恋愛もの、しかも不倫ものか・・と思ったのだが、この5章からなる短編は「交通事故」と言うファクターで繋がっていた。
けして故意ではない、不幸な交通事故だ。
私もクルマの運転は日々する。事故を起こさぬよう注意して運転はしているが、時々ひやっとすることもある。
ちょっとした時間のズレ、ちょっとした不注意がもたらした「悲劇」によって翻弄され苦しむものたちの話でした。

日常に潜む、誰もがこの小説に登場する人物になり得そうなところが怖い。
被害者の心の葛藤も、加害者の心の葛藤も、またその当事者たちを見守る家族や友人たちの心の動きまで丁寧に書かれた小説でした。