大崎 善夫 (おおさき よしお)

「孤独か、それに等しいもの」 大崎善夫 著

<あらすじ>

今日1日かけて、私は何を失ってゆくのだろう―。

孤独の先にあるものを指し示し、

明日への小さな一歩をあと押しする珠玉作品集。

憂鬱にとらえられ、傷つき、かじかんでしまった女性の心を繊細に映しだし、灰色の日常に柔らかな光をそそぎこむ奇跡の小説、全五篇。

豊平川の水面に映る真っ青な空。堤防を吹き抜けるつめたい風。

高校三年の九月のある日、ピアスの穴を開けようとする私に向かって、

かつての恋人は言ったのだ。「大切なものを失くしてしまうよ」と。

 

<感想>

想像以上に暗く重く難解な小説だった。

「パイロット・フィッシュ」で大崎氏を好きになったのにそれ以降の作品でピンとこないのは残念だ。5編とも「死」にまつわる哀しい過去が絡んでくる。

それによって回復不可能な「孤独か、それに等しいもの」を抱え込んでしまった女性の話は

私には理解しきれないまま読み終わってしまった気がする。

 

「アジアンタム・ブルー」 大崎善夫 著

吉川英治文学新人賞受賞後第一作。

 

<あらすじ>

葉子が亡くなってからというもの、僕はいつもデパートの屋上で空を見つめていた。愛する人が死を前にしたとき、いったい何ができるのだろう?喪失の悲しみと優しさの限りない力を描く。

 

<感想>

"パイロットフィッシュ"の続編。

続編と言うが設定的にも微妙に違うので完全なる続編とは思えない。

恋人が癌で死にゆくと言う卑怯な手を使って切なくさせる小説ではあるが、

こんな風に死に向かえたら、こんな風に愛されたら・・っとはやっぱり思ってしまった。

個人的には"パイロットフィッシュ"の方が好き。

作家:大崎善生氏は透明感のあるのに意思のある文章を書くなと

次回作品が楽しみである。

 

「パイロット・フィッシュ」 大崎善夫 著

<あらすじ>

人は、一度巡りあった人と二度と別れることはできない。

それは、かつての恋人から19年ぶりにかかってきた1本の電話からはじまった。

恋人や友、かけがえのない人々との出会いと別れを通じ、

人間の"やさしさ"を描ききった鮮烈の物語。

混迷の時代にあって、静かに、そして深く──

まっすぐあなたの心に届く、青春文学の傑作。

 

<感想>

切なく痛い。いくつも心にじわ~と響く文章が出来てます。

(※ 小説の一部抜粋はココ

 

私の心にはじわ~っと甘い痛みが広がった。

主人公は41歳の独身のちゃんとしてるのか甘ちゃんなのか

よくわかんないふわっとした曖昧な優しさを持つの男。

もう彼を"好きじゃない"と思った時点でこの小説を読めなくなると思うが、

それなりに共有できたら(もしくは感情移入できたら)かなり痛く心に残るだろう。

下手したら活字で泣ける可能性大かも。

40歳を越えて尚をこんな文章をかける大崎氏に興味を持ち、

次回作が楽しみだ。

 

 

「パイロット・フィッシュ」より、好きな部分の抜粋

 

一度出会った人間と、一度発した言葉と、人は二度と別れることはできない。

「セックスってどこか人間の本質的な部分を必ず傷つけずにはおかないのではないかということです。どんなに歓びあっていても、どんなに信頼し愛しあっている恋人たちでも、どこか深いところでセックスは人を傷つけているんじゃないか。歓びが深ければ深いほど、傷跡も深いんじゃないかって」

こうやって無防備に時間は流れていく。幸せなときもそうでないときにも、あまりにも無防備に。そして流れてしまった時間は、突然に音をなくしたこの水槽のように心のなかの奥深くに積み重なって、どうしようもないくらいに積み重なって、やがて手に取ることもできなくなってしまうのだ。歳をとることが怖いのではなくて、そうやって積み重なっていく、それなのに二度と手にできないものが増えていくことが怖いんだ。きっと今のこの瞬間のように、忘れられない幸せな静かな時間のひとつひとつが・・・。

「そう。そうやって別れて19年たって1度も声も聴いたことがなかったのに、僕は今でも確実に影響を受け続けているんだ。それはもの凄く具体的なことで今でも君は僕の行動を制約してる。だから僕は今でも人前でチューイングガムを噛まない」

    (中略)

 「君がたとえ僕の前からいなくなったとしても二人で過ごしていた日々の記憶は残る。

 その記憶がある限り、僕はその記憶の君から影響を与え続けられることになる。(後略)」