乾 くるみ

「イニシエーション・ラブ」  乾くるみ 著

<あらすじ>
大学四年生の僕(たっくん)が彼女(マユ)に出会ったのは
代打出場の合コンの席。
やがてふたりはつき合うようになり、夏休み、クリスマス、
大学時代最後の年をともに過ごした。
マユのために東京の大企業を蹴って
地元静岡の会社に就職したたっくん。
ところがいきなり東京勤務を命じられてしまう。
週末だけの長距離恋愛になってしまい、
いつしかふたりに隙間が生じていって・・・・。

<感想>
本の検索をかけていたら、読後の書評に、「最後の数行でヤラレた!」とか、
「ものすごい伏線が張り巡らされてることにラストで気づいた!」とか
とにかく絶賛されていて、それに興味をそそられて読み始めた。
恥ずかしい話、ラスト2行で「ん??ん??ん???」となり、
ページを繰って確認したり、読み直したりしたものの、
スキッとわかる程にトリックを理解出来ず、悶々とするばかり。
(私ってバカなのかも・・・)と言う落ち込みまで加わった。
だけど、頭ン中は辻褄が合わない文章や主人公=たっくんの性格、
記述がないのにあったように書かれている文章なんかで混乱したまま。
なんとか謎解きのヒントがないかと検索する・・・。
解説サイトを見つけた。

「わかった!!!! そうなのかぁ!」
解説サイトのおかげで理解できた瞬間の気持ちがコレ↑

噂通りに相当練り込まれた伏線が張られていた。
このトリックがわかった人はすごいな。
ヒントは映像になればもっと早い段階で理解できたトリックだと言うこと。
小説だからこそ効果絶大。悔しいけど、やられました。

文章はと言うと、大学生の幼いバカがつくほどの恥ずかしい純愛の展開で、
初体験に遠距離恋愛・・・今さらこの年齢でコレを読む?と
自己ツッコミしたくなるような小説。
それもこれもラストに(まんまと騙された)と言う読後感を味わうためだったワケで
挫折せずに最後まで読んで良かった。

 

 

nagi的「イニシエーション・ラブ」解説

本作を「わかった!!!! そうなのかぁ!」

と理解するためのヒントを少しだけ解説。

完全にネタバレなので本作を読んだ人だけお読み下さい。

私がこの本を読んで違和感を持った点がいくつかあるのですが以下箇条書きにします。

①side-Aより 鈴木夕樹(ゆうき)と言う名前からマユがつけたニックネームが「たっくん」だった点。

②side-B(P247)で

 僕は怒りの発作を抑えつつ、ようやくそれだけを口にした。

 これ以上ここにいたら、またいつかのようにマユを殴ってしまうと思った僕は・・・(後略)

とあるが以前にたっくんがマユを殴ったと言う文章はなかった。

③②とも繋がるがside-Aとside-Bのたっくんの性格に違いがある

④ラスト2行。美弥子はたっくんに対して「辰也?」と言う。

 しかし、たっくんは美弥子の背中をぎゅっと抱きしめている。

 名前を間違えられたワケじゃない?

⑤当時人気のドラマ「男女七人・・・」がAにもBにも登場する。

 Aのたっくんが大学時代に「秋物語」があったならナゼBにも登場?

以上を踏まえて、大きなヒント

その①時系列トリック

読者はside-Aからside-Bに時が流れていると思い込んで読んでいるがこれは思いこみ。実はside-Bからside-Aに流れていたのだ。厳密に言うとBの後半はAとダブっている。

この時点で「あぁ!」と思った人も多いかも?

その②名前のトリック

①に気づいて読み返すと、たっくんの大学の専攻がAでは数学科に対し、Bでは物理・流体力学に変更されている。性格も友だちに対する接し方でAとBは違うし、趣味(読書が音楽)・嗜好(タバコ)も違うと気づく。

Aの夕樹こと「たっくん」とBのスーさん・たっくんは実は「辰也」なのだ。

そう、つまり、A・Bの「たっくん」は別人。

ここまで謎解きをすればわかってもらえると思うけれど、マユはたっくん(辰也)と遠距離恋愛をしている時にたっくん(夕樹)と出会い、アプローチし付き合い始めたワケです。

Aでウブな清純派の印象を持たされたので裏でこんなことしているなんて想像もつかずまんまと騙されてしまったワケです。

以上、軽い謎解き「イニシエーション・ラブ」でした。